怒るおじさんの画像

この記事では個人攻撃型クレームの対処法を紹介している。

個人攻撃型クレームとは、コールセンターなら電話オペレーター、店舗などであれば従業員の個性をあげて批判、中傷するようなクレームをいう。対象となる事柄は事実に限らず、憶測に基づくものも含まれる。

「お前、俺より年下だろ。若いくせに偉そうに指図してんじゃねえよ」
「名前、〇△っていうのか。親もろくでもない名前つけたもんだな」
「どこの生まれだ? どうせ田舎の世間知らずなんだろ」
「アホみたいな顔しやがって。いかにも仕事できないって面だ」

このような個人攻撃をされたら傷つくだろうし、立ち直ることができないかもしれない。しかし、お客さまとはいえ、個人について否定する権利はないし、ましてや憶測でものをいっているのだとしたら、それは許されない。

この記事では、個人攻撃をするお客さまの心理やその対処法について紹介している。もし、あなたが個人攻撃型クレームに悩んでいるのだとしたらぜひ参考にしてもらいたい。

個人攻撃に至る原因

個人攻撃をするお客さまにはいくつかの理由がある。そして、それを知ることで、ただ単に傷ついて終わるだけ、ということはなくなる。理由、原因がわかれば対処することができるからだ。

では、個人攻撃に至る原因とはどのようなものだろうか。大きく次の3つに分けることができる。

個性に対する不満によるもの

お客さまがその人の特性(つまり個性)を受け入れることができず、それが不満となってする個人攻撃である。この原因は、「お客さま側に問題がある場合」と「電話オペレーターや従業員(以下、対応者という)側に問題がある場合」に分けられる。

容姿、年齢、出自などは対応者側ではどうすることもできない。そこが不満だとするならば、それはお客さまの価値観に基づいて発生しているに過ぎない。お客さま側に問題があるのだから、気に入らなければ電話を切るなり店を出るなりすればいい。これを理由に個人攻撃される筋合いはない。

お客さま第一主義で考えるならば、対応者を交代するという選択肢もあるだろう。しかし、このようなお客さまが現れる度、対応者を交代していたのでは仕事が回らなくなる。「申し訳ございませんが、そのご不満については私でどうすることもできません。心苦しいですが、このまま対応を続けさせてもらってよろしいでしょうか」などと言って、お客さまに意思決定させた方がいいだろう。

ただ、このような原因は徹底した差別主義者であるとか特定の思想の持主でない限り、ほとんど考えられない(僕は対応したことがない)。ほとんどの場合は対応者側に問題があって、それが原因で不満が生じ、個人攻撃に至っている

例えば「声が気に入らない」というクレームは、一見どうすることもできないものに思える。対応者の「声」を変えることはできないのだから、それはお客さまの価値観に基づく不満と考えることもできる。

しかし、実際は対応者のトーンに元気がなかったり、不要な話グセがあったりするなど、対応者側の問題であることもある。このような問題は努力によって修正することができるし、”求められるサービス”のひとつとして改善すべきことである。

一時的な感情によるもの

不満をおさえきれず、つい感情的になってする個人攻撃である。対応者に落ち度はないが、不満や怒りの気持ちを伝えたいがために、見当違いの攻撃をする気持ちは理解できないではない。

さらにこうした感情は長続きしないので、後になって「さきほどは言い過ぎた」とお客さま自身が反省することもよくある。よって、一時的な感情が原因で個人攻撃されたとしても、落ち込む必要はないし、反対に後述する「不当なクレーム」と決めつけて臨むことも避けてほしい。

一時的な感情によるものであるかどうかは、話の前後関係をみて判断することである。開口一番に怒鳴っていたり、サービスの不満を口にする中で徐々に口調が荒くなっていった場合は、このケースであることが多い。そのような場合は真の不満を聞き出すことに集中し、傾聴姿勢をみせることで冷静さを取り戻すことができるだろう。

要求を通す手段としてのもの

不満が存在せず、何かしらの利益を得るための手段としてする個人攻撃である。何かしらの利益、というのは金銭やモノといった経済的な利益だけなく、自尊心を満たすとか優越感を得るためといった精神的な利益も含まれる。こうした利益を得るためにする要求は不当クレームと言われる。なお、クレームの分類、定義については次の記事を参照してもらいたい。

https://atama.co.jp/entry/claim-teigi/

要求を通す手段としての個人攻撃の特徴は、真っ向から相手を否定するのではなく、対応者が回答に窮するようなことをあえて質問したり、脅かしたりしてその反応をもって要求を通そうとするものが多い。

不当クレームについては相手をお客さまと考えず、毅然とした態度で対応しなければならない。そこで、その判断、見極めが大変重要になってくる。以下に不当な個人攻撃をするクレーマーの共通点について紹介しておく。

個人情報を聞き出して攻撃する

例えば「大学は出てるのか?」、「年齢はいくつだ?」、「どこに住んでる?」といった個人情報を聞き出し、そこをきっかけに攻撃する。この攻撃は、要求を通す、というより対応者が回答に窮することで優越感を得ようとするものが多い。

(学歴や年齢を聞いて回答した場合)
「なるほど、大卒か。俺は高卒なんだよ。どうせ大卒だから俺のこと見下してるんだろ? な、そうだろ?」
「なんだ、俺より若いじゃないか。それなのに、よく偉そうに指図できたもんだな。年上を敬えって習わなかったのか? 俺に若造の言うことを聞けっていうのか?」
(住所を聞かれて回答した場合)
「だったら俺の家まで近いじゃないか。今回の件は直接謝りにきてくれれば許してやるよ」
「そこは高級住宅街だな。親御さんも金持ちなんだろ? そういう家は貧乏人をバカにするからな。お前が心の中では俺をバカにしてることはわかってるんだ」

意見や感想を求めて攻撃する

会社として対応をしていることを伝えても「いや、そうじゃなくお前の意見はどうなんだ」とか「本当の気持ちを教えてくれ」と対応者個人の意見や感想を求め、その回答をきっかけに攻撃する。こちらは揚げ足をとって「要求を通すこと」が主な目的である。

(意見や感想を回答した場合)
「言ったな? 確かに今、聞いたぞ。もう言い逃れできないからな。そういう風に対応してくれるんだろうな?」
「さっきと言ってることが矛盾してるじゃねーか。お前は、自分が言いたくもないことを言わされてるのか? ただの奴隷か? 自分の意思があるならできるんじゃないか?」

要求が通らないとわかった時点で攻撃する

これは、回答に窮する攻撃だけでなく、わざと激高して怒鳴り散らすようなものも含まれる。そうすると「一時的な感情によるもの」と区別がつきにくいが、決定的な違いは、攻撃が始まるタイミングである。

前述のように、一時的な感情による場合、不満や怒りの延長線上に個人攻撃があるので、話の冒頭や、ヒートアップしていく過程で攻撃に入る。一方、要求を通す手段としての攻撃は、要求が通らないとわかった時点で攻撃に入る。

例えば「さっきから気になっていたんだけど、お前の声、腹立つんだよ! 失礼だろ!」とか「そういえばお前の顔、人のことバカにしてるよな? さては、俺のことバカにしてんな? あー?」というように、それまで不満として表明していなかったものを急に切り札のように出してくるのが特徴だ。また、続けて「だから上の者を出せ」と上席対応にして、要求を押し通そうとすることも多い。

個人攻撃に付き合う必要はない

要求を通す手段としての個人攻撃のように、対応者側に何の落ち度もないのなら個人攻撃に付き合う必要は全くない。さきほどの例でいえば、そもそも個人的なことを質問されたり、意見を求められたりしても答える義務などどこにもない

個人的な質問、意見を求められた時の話法
「恐れ入りますが、わたくし個人に関することについてはお答えできかねます」
「会社として対応しておりますので、回答は差し控えさせていただきます」
「申し訳ございませんが、わたくしについて話すことはお断り申し上げます」

このように毅然として「会社として対応している」、「個人に関することは一切答えない」という姿勢を貫き通せばいい。場合によっては「なぜ答えられないんだ?」のように理由を求めてくることもあるが、余計な理由付けは考えず「わたくしが答えたくないからです」、「個人的なことをお答えする義務はございません」と率直に伝えるようにしよう。

また、個人攻撃をされた後についても決して対応者側は感情的にならず、冷静にそのような発言をやめてもらいたい旨を伝える。

個人攻撃を止めてもらう話法
「どうか、わたくし個人に対する誹謗、中傷はお止めいただけますでしょうか」
「わたくしは、お客さまがおっしゃった言葉に大変傷ついております。どうかお止めください」

個人の容姿、人格を否定するに留まらず、「家に行く」とか「家族に迷惑がかかるぞ」といったさらにエスカレートした発言があった場合は次のように言うこともできる。

度を超えた個人攻撃に対する話法
「今の発言は脅迫でしょうか。わたくし、大変恐怖を感じておりますのでお止めください」
「そのような発言をお続けになるのならこれ以上お話しすることはできません」

繰り返しになるが、理不尽に個人攻撃をされても、その攻撃に付き合う必要はない。もっとも、「個性に対する不満によるもの」や「一時的な感情によるもの」が理由であっても、より丁寧な言い方に変えるだけで「個人的なことは答えない」、「攻撃をやめてもらう」ことには変わりない。

まとめ

最初に、個人攻撃に至る原因として「個性に対する不満によるもの」、「一時的な感情によるもの」、「要求を通す手段としてのもの」に分けられることを説明した。

確かに”個人攻撃される”ことは耐えがたい苦痛だと思う。しかし、このように原因を切り分けることで、自らどのような反応をとるべきか選択できるようになる。つまり、いずれの場合でも、表面上の言葉だけを捉えて傷つく必要はまったくない。

次に、個人攻撃された場合の切り返し方を説明した。これらは「要求を通す手段としてのもの」を前提に説明したが、それ以外の場合であっても使うことはできる。あなたに落ち度がないのであれば、結局、どのような原因にせよ、お客さまにあなた自身を否定する権利などないのである。

お客さまが存在しなければビジネスは成り立たない。お客さまがいてくれるから我々は生活ができる。そういう意味でお客さまは「神様」かもしれない。しかし、商品を売る・買う、サービスを提供する・利用するというのは、あくまで互いの自由意思による「人間」同士のやり取りだ。

そのような関係において我々の立場は対等である。つまり、お客さまであっても相手を傷つける権利を持たないし、我々が傷つけられる理由もない。このように考えることができるのならば、個人攻撃を受けた時の自らの反応を少しは変えることができるのではないだろうか。