相手にわかりやすく話を伝えるために結論から話すことが良い、とされている。しかし、効果を得るために最低限守らなければならないルールもある。

普段、結論から話すように心がけている人でも話が伝わらない、または話がわかりにくい、と言われたことはないだろうか。そういう人は、この”最低限守らなければならないルール”が抜けていることが多い。

そこで、この記事では、正しく「結論から話す」方法やその注意点、目的について紹介する。

そもそも結論から話す、とはどういうことか

「結論から話す」とは、結論から言うと、理由や経緯などを述べる前に、話の結論(結果)を先に伝えることをいう。

「結論から話す」ことについて、結論から話してみた。

……さて、どうだっただろうか。

結論から話されて、なるほど、よくわかった! と思えただろうか。 多分、全く思わなかったはずだ。ほとんどの人が「で?」と言いたくなったのではないだろうか。

結論から話しても伝わらない理由

当たり前のことだが、結果には、それを生じさせた原因があり、結論には、その結論に至った理由があるわけで、これらも併せて話さないと伝わることはない。さきほどの話であれば、結論から伝える目的や、メリットなどを入れないと伝わらない、ということだ。

「そんなの当たり前じゃん」、「結論から伝える、というのは理由ありきでしょ」と思われるかもしれないが、残念なことにこれが出来ていない人が実に多い。結論だけ伝えて満足しちゃう人がホント多いのだ。

上司「売上目標は達成できたのかね?」
部下「結論から言いますと、未達成です。理由としては、相当厳しい状況でして、いろいろと努力はしたのですが、達成することができませんでした。」

もし、この会話をみて「あれ? 部下くんは、理由もちゃんと伝えてるんじゃないの?」と思った方はよく注意してほしい。

この話の結論は「売上目標が未達だった」ことだが、その原因や理由が本当に述べられていると言えるだろうか。もう一度よくみてもらいたい。確かに、会話は自然である。しかし、「厳しい状況だった」ことや、「努力したけど達成できなかった」というのは、結局「目標が未達成だった」ことの言い換えに過ぎない

つまり、理由でも原因でもなんでもない。結論しか話していないのと同じだということである。先述したように、結論から話すのであれば、必ず原因や理由も併せて伝える必要がある。

相手が思うwhyを用意して話す

では、原因や理由とは何か。それはwhy(なぜ)に応えることのできる内容のことである。

上司「売上目標は達成できたのかね?」
部下「①結論から言いますと、未達成です。②新商品販売があったのですが、これに伴い既製品を一時的にすべて撤退させました。しかし、新商品より既製品の方にニーズがあり、新商品は想定より売れませんでした。また、先の理由から既製品の提供も遅れ、キャンセルが相次ぎました。③そのため、目標を達成することができませんでした。」

部下くんの戦略の良し悪しは別として、今度の話では、結論に対する理由(原因)がきちんと述べられている。そして、それらの理由、原因はすべて「売り上げが未達成なのはなぜ?」というWhyに応えることのできる内容である。

ところで、結論から話す際は

  1. 結論
  2. 理由(原因)
  3. 結論

の順番で話すことが望ましい。上の例でいえば最初に未達成であるという結論①を伝え、その後に未達成である理由②を述べる。最後に再び「だから~だ」とか「そのため~だ」というように改めて結論③を述べる。

結論から話す、の目的

結論から話す際の最低限のルールについてはわかってもらえたと思う。つづいて、結論から話す、の目的についてお話ししよう。

なぜ、結論から話す、のか。それは主に次の3点のためである。

相手が話の要点をすぐに掴んで、迅速に対応できるようにするため

スピードが求められるビジネスの場において重視される目的である。例えばトラブルの報告や、エレベータートークなどでその力が発揮される。迅速さが求められる状況で、もたもたと経緯や理由から説明されたのでは、相手も「いいから、結果どうなったのか教えて!」と言いたくなってしまう。

あらかじめ話のゴール(終わり)を知らせることで、相手に話を整理させ、落ち着いた状態で聞いてもらうため

お客さま対応や、教育の現場で重視される目的である。ただし、結論から伝える、というよりは、目的を伝える、といった方が正確だ。

例えばテクニカル系のコールセンターで、エラーを解消させるための作業をすぐ案内するのではなく、先に「◯◯が原因と思われますので、△△を取り除く必要があります。そのため◇◇していただきたいのですが、よろしいでしょうか。」となぜその作業が必要か、目的を伝える。

新人の教育で、いきなりその作業をさせるのではなく「これから教えることはうちの会社の中では◯◯の位置付けなんだ。そしてこれがうまく機能することで、△△になるんだよ。」と作業の目的を伝える。目的が明らかになれば、単調な作業であっても、常にゴールを意識することができ、モチベーション維持にもつながることになる。

結論から話すことで、話し手自身が横道に逸れないため

話し手の意識において重視される目的である。みなさんもこれまで「あれ、私は何を言いたかったんだっけ」となってしまい、うまく話すことができなかった、という経験がないだろうか。そこで、先に自らの口で結論を伝えておくことで、あとはゴールへ向かって話を進めるだけだ、という心の余裕が生まれる。そして、ゴールが明確になっているため、話が横道に逸れてしまうといったことを防ぐことができる。

状況に応じて目的も異なるが、どのような状況であれ、結論だけ、はもちろんダメである。とはいえ、すべての場合で同じような話し方をすることもよくない。状況に合わせ、相対的に結論部分に重きを置くか、理由部分に重きを置くか、は変える必要がある

ネガティブな結論は少し濁す

さきほど、例題として部下くんの「目標が未達成だった」ことを挙げて説明したが、現実ではネガティブなことを「結論から言いますと」と言ってしまうのは、あまり良い印象を与えないことがある。

あなたが上司だとして、部下に何かを頼んだ際、「結論から言いますと、できません」と言われたら、ちょっとムカッとくるはずだ。上司としては、できることを望んで頼んでいるわけでだから、「なんで、できないんだ!」という苛立ちが邪魔をしてしまい、たとえ正当な理由だとしても冷静に聞くことができなくなってしまう。

そのため、結論がネガティブなものであれば、少し濁すように伝えるといい。濁すといっても誤魔化すわけではない。相手の気持ちを汲み取って、少し理由を加えるとか、クッション言葉を入れるとかするようにする。

「今、手持ちのタスクがいっぱいで、正直厳しい状況です」

このように伝えた方が、上司も「ああ、そうなの。じゃあ少しタスクもらおうか?」とか「期限が◯◯ならいけそうかな?」とか譲歩してくれるだろう。

まとめ

結論から話すことは、今やビジネスマンとして当たり前のスキルになっている。しかし、結論だけ話してそれでおしまい、という伝え方も現実に多く存在している。厄介なのは、理由になっていないことを、話し手自身が気づいていないことだ。

そういったことがないよう、常日頃から結論に対する理由、結果に対する原因を考えるクセをつけ、それで伝える、ということを意識してもらいたい。