土下座事件のような悪質クレームに対応する方法

クレーム対応

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このブログは僕のこれまでのコールセンタースキルを活かし、クレーム対応に関するノウハウを公開している。

と、偉そうなことを言ったが、何を隠そう私も相当なクレーマーだ。おかしい! と思ったことがあるとすぐに電話かけて文句を言っちゃう人だ。でも、実はコールセンターに勤めている人こそクレーマーが多い。

実際のクレーム対応でも「僕もね、コールセンターで働いているからわかるんだけどさ」というような発言をなさるお客さまと何度もお話ししたことがある。

ただ、そういうクレーマー(僕を含めて)は厄介ではあるけど、話の筋が通っていれば納得してくれることも多い。

問題は、話の筋が通っているのに納得しなかったり、まるで関係のない要求をしてきたりするクレーマーだ。こうしたクレーマーを一般的に悪質クレーマーという。

最近では、政府がこの問題に乗り出す姿勢を見せているが、またまだ土下座事件のようなクレームの域を超えた事件が多く発生している。

そこで、この記事では悪質クレームの対処法について紹介する。

正当クレームと不当クレーム

クレーム対応にあたっては、まずそのクレームを分類し、問題の本質がどこにあるのかを見極める必要がある。

簡単な分類としては、お客さまが真に嫌な気持ちになったり、不利益を被ったことに対する正当なクレーム(要求)と、お客さまの利得自体を目的とした不当なクレームに分けられる。

昨今、話題になっている土下座事件は、発端はどうであれば、最終的にはおもしろがって写メを撮ったり、SNSに投稿したりしているところをみると、不満から派生した要求ではなく、自尊心を満たすためのものだということがよくわかる。つまり、不当クレームである。

こうした不当クレーマーに対して企業は毅然とした態度で臨まなければならない。

……とまあ、ここまではよくいわれていることだと思う。では「毅然とした態度」とはどういったものなのだろうか。

悪質なクレーム対応は法律を味方につける

悪質クレーム、不当クレームは、もはやクレームではなく事件として対処すべきである。そのため、相手をお客さまと捉えるのではなく、犯罪者として考える。そこで、法律の知識が必要になってくる。

土下座事件で有名になったが、土下座を強要する行為は、刑法第223条の強要罪にあたる。

生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

よく漫画などで「誠意を見せろ!」と土下座を強要するシーンが出てくるが、これは立派な犯罪である(カイジに出てくる焼き土下座は言うまでもない)。

なので、こうした要求には全く応じる必要はない。そして、そのような要求があった時、最初に「毅然とした態度」で対応することが求められる。

以下にトーク例を載せておいた。ちなみに、土下座要求の前にあった当初のクレームが正当なものか、不当なものかによって少し言い方が変わるので注意してもらいたい。

(当初のクレームが正当なものであった場合)
「お客さまにご不快なお気持ちをさせましたことは本当に申し訳なく思っております。大変、申し訳ございませんでした。土下座をしろ、とのことですが、こちらはどうかご容赦くださいますようお願いいたします。」
(当初のクレームから不当なものであった場合)
「恐れ入りますが、謝罪および土下座につきましてはお断り申し上げます。」

前述したように当初のクレームが正当なものか、最初から不当なものであったかで、少し言い方は変わる。ただ、いずれの場合も断固として土下座は断断っていい。

もし、「なぜしないんだ」、「迷惑かけていると思ってるなら、土下座しろ」と言われた場合は次のように言おう。

(当初のクレームが正当なものであった場合)
「お客さまのお気持ちに対してはこの謝罪が精一杯のものです。これ以上のご要望には沿い兼ねますことをどうかお許しください。」

それでも要求が続いた場合は

「恐れ入りますが、これ以上の謝罪につきましてはお断り申し上げます。」

と言えばいい。

そして、正当クレーム、不当クレームともに、それでも要求が続くようであればこのように続ける。

「大変残念ですが、これ以上わたくしどもから申し上げることは何もございません。どうぞお引き取りください。」

ちょっとキツイ言い方にも聞こえるが、ここで少しでも同調したりすると、相手に付け入る隙を与えてしまう。謝罪をしているのに土下座を要求することは、その時点で犯罪行為であり、これ以上交渉を続ける必要はないのだ。そのため、あくまでも丁寧に、かつ厳しい表情で淡々と伝えることに徹してもらいたい。

さらに要求が続いたり、帰ってくれない場合は刑法第130条の不退去罪にあたる。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

まず、謝罪のための土下座要求は正当な理由にあたらない。お引き取り願ったにも関わらず、その場に居座ったり、不当な要求を続けたりした場合は不退去罪になる。これを告げるときのようなトーク例は以下の通りだ。

「再三のお願いにも関わらずこのような行為をお続けにるようであれば、大変不本意ではございますが、警察署へ連絡いたします。」

相手はお客さまではない、犯罪者である。ここまで説明しているのに、強要、居座りを続けるのなら公権力に出てきてもらうしかない。

そもそも誠意とは何か

こうした不当要求はだいたいが「態度が悪く腹が立った」や「精神的苦痛を味わった」といったところから発展する。

そして、「ただ謝るだけじゃ納得できない。誠意を見せろ」と続き、最終的には金銭の要求か、土下座のような自尊心を満たすための要求へと変貌する。

もちろん、お客さまに何らかの不利益を与えてしまい、それが金銭で換算できる場合は、お金で償わなければならない。これは民法第709条で定められている。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

もし自社の製品で相手に傷害を負わせた場合は治療費や、休業損害、慰謝料などをお金で賠償しなければならない。

しかし、「態度が悪い」というクレームであった場合は、どこにも損害が発生していないため、法律上の損害賠償責任は生じない。企業側がしなければならないことは、せいぜいお客さまが不快に思ったことに同調し、お詫びをすることくらいである。

ちなみに民法上の損害には精神的損害も含まれている。あまり考えられないが、お客さまに対し、従業員が罵声を浴びせたり、中傷するようなことを言ったりした場合、相手の精神的損害を根拠に慰謝料を支払わなければならない可能性も否定できない。

ただ、どのような場合であっても、早々にお金で解決するようなことは望ましくない。そもそもその損害に相当因果関係があったのか、つまり本当に企業側の行動が相手方の損害に結びついたのか、は相手が立証しなければならないからである。

極端に言ってしまえば、「精神的苦痛を負った!」という客に対し、丁重なお詫びをしているのにも関わらず、不当要求を続ける場合は「どうぞ、それなら裁判を起こしてください」というスタンスで構わないということになる。

まとめ

今回のポイントとしては、相手が不当クレーマー(悪質クレーマー)であった場合は、お客さまとして考える必要はない、ということである。一歩引いて、相手の行為が不当なものであることを冷静に伝える。それを再三やってもダメなら、警察という公権力に出てきてもらう。このような道筋が頭の中にあれば、理不尽に土下座をさせられたり、金銭を渡したりすることはなくなる。

ただ、ここまで書いておいて最後に言うのもあれだが、世の中土下座事件の犯罪者のような悪質クレーマーの方がまれで、実はほとんどのクレーマーは正当な要求をしている。

一番危険なのが、そうした正当な要求を言葉や態度だけで判断し、悪質クレーマーだと早々に決めつけてしまうことである。

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こちらの記事でも書いたように、大事なことは言葉の裏にどんな不満があるのか、どうしてそのような感情になってしまったのかを責任をもって聴くことである。

「ばか」「死ね」「土下座しろ」これらの発言は恐怖を感じ、とても落ち着いて対応ができるようなものではないと思う。しかし、コールセンターの一番の目的は「お客さまの話に親身になって耳を傾ける」ことだ。それをせず、相手の一時の感情をそのまま受け取るようなことは絶対にしないでもらいたい。

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