「会社に行きたくない」と思ったら適応障害になっていた

人生

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「会社に行きたくない」

社会人なら一度はこのように考えたことがあるのではないだろうか。僕もその一人だ。けれど、それで実際に行かないということはあまりない。両手で頬をピシャッとやって、結局は出勤することになる。

その日も同じようなものだと思っていた。しかし、どうしても布団から抜け出せない。会社に行きたくない。いや、行きたくない、というよりは”行けない”と言った方が正しいかもしれない。仕方なくその日は会社を休んだ。

しかし、それが3日続くとさすがにこれはおかしいと思った。そこで、心療内科を受診したところ適応障害抑うつ状態と診断された。

この記事では、そもそも適応障害とは何か、なぜ適応障害になったのか、また休職に至るまでの前兆など僕に起こったことを紹介する。

適応障害とは

適応障害は、大きな葛藤や不安を引き起こすようなある特定の環境(ストレス因子)があったために、憂鬱な気分になったり、神経が過敏になったりするメンタル疾患である。

気分の落ち込みなどは日常生活でも起こるが、適応障害は、ある特定の環境にいる限り、抑うつ気分があったり、集中力を失ったり焦ってイライラしたりするなど持続して日常生活に支障をきたす。また、無断欠勤やけんか、破壊行為などの行為障害を伴うこともある。

適応障害は後述するうつ病と違い、ストレス因子が直接の原因である。したがって、そのストレス因子を取り除くことができれば、6カ月以内に治癒するといわれている。ストレス因子がなくなれば、外出するなど普段通りの生活を送ることもできるため、軽症とみなされたり、人によっては仮病と疑われたり、まだまだ理解されているとは言い難い。

ストレス因子は人によってさまざまだが、仕事、恋愛、家庭、学校などに、大きな環境の変化が生じたり、責任の重さが生じたりした時に発病するケースが多い。仕事ではこれまでの役割が変わった、とか家庭でいえば引越し、夫婦仲の問題などが挙げられる。

うつ病との違い

適応障害には、何らかの直接的な原因、ストレス因子がある、しかし、うつ病の原因は、まだ研究途上であって、発病の原因は特定できないことが多い。したがって、うつ病を引き起こす原因(と思われるもの)は、誘因と言われ、さまざまな状況から引き起こされていると考えられる。また、脳内の神経伝達物質の不良によっておこる生物学的要因も考えられている。

適応障害はストレス因子を取り除けば症状は改善していくが、うつ病は、そもそも原因の特定が非常に困難であるため、発病前の状況に環境を戻すようなことをしても症状は改善しない。うれしいことや楽しいことがあったとしても、気分が乗らず、さらに落ち込んでしまうこともあるのだ。

僕が適応障害になった理由

医者によると僕が適応障害になったのは、人事異動による職場での環境(役割)変化が一番大きいという。僕はこれまで新人育成や、業務改善のための研修を専門に行ってきた。2人だけの研修チームなので、土日休みにするなどシフトは自由に決めることができた。また、現場業務と違って、その日決めた仕事が終われば、残業せず帰宅することもできた。

今の会社では研修講師として3年以上働いてきたが、つい最近チームが解散され、僕は現場の管理者(SV)として配属されることになった。現場では、これまでの環境と違って、シフトは自由に決められない(土日も出勤しなければならない)。また、残業もこれまでほぼゼロだったものが、いきなり30~40時間となった。

とはいっても、僕も10年以上コールセンターで管理者を経験している。前の会社では研修講師としてではなく、SVとして働いていた期間の方が長い。そのため、久々の現場業務は辛いというよりむしろ楽しかったし、やりがいも感じていた。

一方、僕にはこういう不安もあった。僕が配属されたチームにいるのは、僕が研修講師時代に新人として教育した人たちだ。つまり今ではその人たちがベテランや管理者となって、今度はその人たちから仕事を教わられなければならない。業務知識については講師をしていただけあって自信もあったが、チーム独特の雰囲気、環境に慣れるのが大変だと感じた。また、かつての新人が僕を受けれ入れてくれるかどうか、といった心配も大きかった。

また、これまでは土日休みの固定勤務が基本だったので、家庭とのバランスが保てていた。これが、土日出勤することになり、残業も増えたことで、そのバランスが崩れていった。次第に仕事中にミスをしたり、気分が落ち込んで泣き出しそうになったりすることも多くなり、家でもイライラする、なかなか寝付けない、朝起きられない、ということが増えていった。

このような環境変化で、僕の生活はがらりと変わってしまった。厄介なのは、それをあまり意識することなく、「大変だけど頑張ろう」と自分に言い聞かせ、これまでの生活を維持しようとしていたことである。要するに気分の落ち込みもイライラも、「自分がまだまだ未熟だからだ」と無理をしていたのである。

だから、病院へ行く時も最初は次男の夜泣きや引越しによる家庭環境が原因だと思っていた。そのため「職場での環境変化」を指摘されたときは本当に驚いた。まさか自分が、仕事が原因で適応障害になるとは思いもしなかったのだ。

適応障害の前兆や現れた症状

今になって思えば、職場でこれまで我慢できたようなことができなくなり、イラついてしまうことが多くなっていた。以前に比べて不平不満をこぼす回数も増えた。職場の人と話すときは極度に緊張して、手がふるえたり、焦ったりしてどもってしまうということも出てきた。

その後、会社を休むようになって3日くらいは「僕はなんてダメなやつなんだ」と自分を責め、頻繁に泣くようになった。職場で僕に不満を言っている同僚や後輩の姿を想像して一日中布団から出られないこともあった。

一番大きかったのは睡眠障害だ。これまでは朝活といって早起きして勉強をしていたが、これがまったく起きられなくなったのだ。夜も動悸がしてなかなか寝付けない。夜中に突然目覚めてしまうこともあった。そうかと思えば、夕方まで眠り続けてしまう、という日もあった。

適応障害の治し方

適応障害を治すためには、まずストレス因子を取り除くことが重要である。職場環境が原因であれば、職場を変える、とか転職する、といったことが有効だ。僕の場合、まずはしばらく環境から距離をおいて(休職して)症状が改善されるかをみることにした。

会社には、復職後、給料が下がってもいいので、これまでと同じような環境の職場へ異動したい、ということも相談した。ただ適応障害は、まだまだ理解のある疾患とは言えない。こうした環境調整には周囲の協力、サポートが不可欠だ

ストレス因子を取り除く以外に、適応障害を治す方法として精神療法薬物療法がある。精神療法では、自分の性格や行動パターンを振り返って、ストレス因子の意味や、そのストレス因子への対処法、耐性を高める考え方を知る。それをもって、ストレス因子と付き合っていけるようにする。通院している心療内科では「そういう時は〇〇と考えてみてはどうか」など医師からアドバイスをもらうことができる。

薬物療法は、症状に応じて抗うつ薬や睡眠薬を用いる方法だ。僕も軽めの抗うつ薬を処方してもらっている。これは、飲んですぐに症状が改善されるというものではなく、持続的に飲むことで、安定してくるというものだ。やはり服用していると気分がまるで違う。

こうした環境調整、精神療法、薬物療法を組み合わせ、体、心を健全な状態に戻していく。幸い治療を開始してから、最初の頃にあった抑うつ気分は改善されていっている。

治療中に気をつけること

適応障害は、ストレス因子となる状況から解放されていれば、普段と同じように生活することができる。そのため、治療中に気をつけること、というのは特になさそうである。しかし、次に挙げるようなことは、たとえ調子が良かったとしても控えた方がいい。

飲酒

まず、薬が処方されている時点で飲酒は良くない。ただ、ストレスの解消となるような”いいお酒”であれば多少は許されると思う(先生も「薬を処方する医者の立場として良いとは言えないけど」とした上で同じように言っていた)。

僕は、普段からあまりお酒をコントロールできるタイプではない。最初は楽しく飲めるが、途中から止まらなくなって”悪いお酒”になってしまう。実は治療中に飲酒による失敗を2回もやらかし、妻にはほとほと呆れられた。こうしたことから、やはり飲酒は控えた方がいい。

一人での遠出や旅行

調子が良くても、突然思い出したように抑うつ気分に襲われることがある。ひどい場合は死を考えることもある。そういった時に一人で、しかも家から遠くの場所にいたらどうなるだろうか。良からぬことをしないという保証はどこにもない

また、睡眠不足や体が本調子じゃないこともあって、普段より疲れやすくなっている。近くの買い物でさえ、帰ってきたときはグッタリしていることがある。そのため、気分転換と考えあまり無理をしすぎると、かえって悪い結果を招くこともある。

車の運転

理由は前述の通りだが、加えて薬を処方されている場合、運転は絶対にしない方がいい。僕は抗うつ薬と一緒に、夜の眠りを良くするような薬も処方されている。

日中、ボーッとしていると急に眠気に襲われることもある。これが車の運転中だと思うとゾッとする。したがって、旅行と同様、治療中は車の運手を控えた方がいい。

まとめ

適応障害は、うつ病と違ってその原因を取り除けば治ると言われている。僕もそれを信じて療養に励んでいる。だから、休職していることを恥じることなく、むしろ神様が与えてくれたチャンスと捉え前向きに過ごしていきたいと思っている。

この記事を読んだ人の中には、「適応障害なんて単なる甘えだ」と考える人もいることだろう。僕も、最初はそういう風に考えていた。「自分は根性が足りないんだ」、「職場のみんなも甘えだと思っているに違いない」と。そして、そう考える度に、暗い気持ちになり、余計に辛くなった。

しかし、適応障害は誰でもなりうるものだ。僕だって縁がないモノ、と考えていたのになってしまった。ならばこれはもう開き直って「休みを満喫しよう」と考えた方が得である。そういう風に考えた方がはやく快方に向かう気がする。

人がストレスに感じることは、その人によって全然違う。Aというストレス原因を強くストレスに感じる人もいれば、そうでない人もいる。だから、「自分のは甘えだ」と無理に決め付けようとせず、少しでも辛いのであれば、一度心療内科を受診してみるといいと思う。

この記事が少しでも同じように悩んでいる人の役に立てれば幸いだ。

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