民法とは何か、簡単に解説してみました

民法

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法律と聞いてどんなものをイメージするだろうか。法律には、何かしらのルールが定められていて、ルールである以上、しっかり守らなければならないし、ルールを破ったら罰が与えられる、というのが一般的なイメージだと思う。そうした法律の代表的なものが刑法だろう。私も法律の勉強を始める前は法律=刑法だと思っていた。

しかし、民法という法律は刑法のような法律とはちょっと違う。民法を知るためには、民法と他の法律を区別し、整理しておく必要がある。

この記事では、数ある法律の中で民法がどのような立場にあり、どのようなことを定めた法律であるのかを簡単に解説する。


形式的意味における民法と実質的意味における民法

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すでにこちらの記事をご覧になった方はなんとなくイメージできると思うが、民法は形式的意味における民法(形式民法)と、実質的意味における民法(実質民法)に区別することができる。まず、形式民法は、我々が”民法”と聞いてすぐに思い浮かべる「民法」という名の法典のことである。全部で1044条も条数があり、これは日本国内の法律で最長らしい。勉強している身としてはオェーッである。

対する実質民法は民法典に載っているかどうかは関係なく、「内容が民法だよねッ」というものであればそのように呼ぶ。「『内容が民法だよねッ』ってなんだよ!」と思うが、そもそも法律は大きく次のふたつに分けることができる。

公法と私法

冒頭述べた刑法というのは、何らかの罪を犯した人に対し、国が強制力をもって人の権利を奪い、義務を課すことができる法律である。また、憲法は国家に対し義務を課し、国民の権利を保障(守る)するものだが、これも公的な権力を持つ国と国民との関係を規律するものである。

このように、当事者の一方が国や地方公共団体などの公の権力の担い手であって、その相手方との間に権利、義務の関係を直接作り出すことを目的とするような法を公法という。

それに対して、個人と個人、法人と法人、個人と法人のように公の権力が当事者になるわけでなく、私人同士での取引(主に契約)を規律する法を私法という。ちなみに、私人という言葉は”個人”と混同されがちだが、個人に限らず会社などの法人も含まれる。明確に区別することは難しいようだが、公的な地位や立場にある人(または団体)を公人と呼び、それ以外を私人と考えておけばいいと思う。

そして民法は、私人同士に関するルールを定めた法律だから、私法に分類される。読んで字のごとくだから民法なのである。この民法は形式民法の民法典はもちろん、商法、会社法、消費者契約法なども私人間のルールを定めたものなので私法に分類される。

さきほどの話に戻ると、法律の内容が私人間を規律するためのものであればそれは「内容が民法だよねッ」ということになる。そこで商法や会社法も「民法」というタイトルではないけれど、実質民法と呼ばれる。

反対に民法の中には実質民法でないものも存在する。37条は外国法人の登記についての決まりが書かれているが、その8項は、「この条に規定する登記を怠ったときは、五十万円以下の過料に処する。」としており、これは国が行政罰を課す規定である。よって37条8項は、形式民法ではあるけれど、実質民法ではない。

私的自治の原則と契約自由の原則

私法は私人間の取引、主に契約に関するルールが定められている。ルール、というと”絶対に守らなければならないこと”と考えてしまうが、私法には「私人間のことは、国(法)などが介入せず、当事者同士に任せましょうよ」という考え方がある。これを私的自治の原則という。

私人間の関係は、国と国民との関係と違って、それぞれが対等な立場同士である。対等な立場なら、自分たちのことは自分たちの意思で決められる、他社が勝手に決めるべきではない、というのがその理屈だ。

人と人とが何かしらの約束をすること(=契約)も、その方式や内容(何を契約するか等)について、基本的には人々の自由に委ねられている。私的自治の原則の中でも、とくにこのような契約に関する私的自治を契約自由の原則という。

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民法の役割

そうすると、何のために民法(私法)があるのか少し疑問に思わないだろうか。人々が自由にルールを定めることができ、民法という法律を絶対に守らなければならないとすると、民法の存在意義が不明になる。これを明らかにするため、次の例題を用意した。

Aさんは、高級ブランドバックを10万円でBさんに売ると言いました。Bさんは、そのバックを10万円で買う、と言いました。

Aさんはバックを売ってお金をもらうことを、Bさんはお金を渡してバックを受け取ることについてそれぞれ自分たちの意思で決めている。そうすると、この契約については私人間が定めたルールとして何も問題がないように思える。でも、次のようなことが起こっていたらどうだろうか。

  • Aさんは、「これはブランド甲のバックだ」と言っており、Bさんはそれを信じて購入した。しかし、実際はブランド乙のバックだった。
  • Aさんのバックは、実は30万円の価値があった。しかし、BさんはAさんを脅して、Aさんに「10万円で売る」と言わせていた。
  • Bさんは「10万円は明日支払う」といってバックを受け取ったが、約束の期日になっても10万円を支払わなかった。
  • Aさんが売ったバックは、実はAさんがCさんから盗んだものだった。Bさんもそれを承知の上で購入した。

これらは俗にいうトラブル(=問題)である。こうした問題に備えて、あらかじめ「ブランド甲でなかった場合は」とか「お金を払わなかった場合は」と、当事者同士で決めておければいい。しかし、個人間での売買で、こうした問題すべてを予測し取り決めておく、というのは相当難しい。

だからといって「何も決めていないのだから」ということで、Aさん、またはBさん(あるいはCさん)の誰かについて、何の落ち度もないのに損をしてしまうということはあってはならない。

そこで、民法ではこうした問題について、いくつかのルールが規定されている。つまり、「嘘をつかれていた場合」や「お金を払わなかった場合」についてきちんとルールが書かれているのである。

当事者同士で契約に関することだけでなく、あらかじめ問題が生じた場合についても決めてあれば、それが優先されるが、もし決めていないような問題が生じた場合は、法律の力を借りて(今回の場合だと民法の規定に沿って)問題を処理することができるのだ。

したがって、民法というのは、私人間の取引等について手助けしたり、問題が生じた場合は、中立的な立場から紛争を解決したりすることを主な役割としている。

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